賈島『題李凝幽居』を暗唱してみた|「推敲」の語源になった有名な漢詩

ti_linig_youju 中国語
『題李凝幽居』賈島

文章を書いていて「もっといい表現はないかな」と、何度も書き直すことを「推敲する」といいます。

この「推敲」は、中国・唐代の詩人・賈島(かとう)の『題李凝幽居(Tí Lǐ Níng Yōu Jū)』にまつわる故事から生まれました。

今回、TLIでの中国語マンツーマンレッスンでこの詩を朗読しました。

この記事では、『題李凝幽居』の情景を4コマ漫画で眺めながら、全文・ピンイン・意味、「推敲」の由来や、私が実際に朗読した音声、レッスンでの気づきもご紹介させていただきます。

みなと
みなと

前回の『水調歌頭・明月几时有』とは、また違う角度から『題李凝幽居』を学びましたので、お役に立てばうれしいです。

TLIの宿題は、賈島『題李凝幽居』の暗唱

漢詩の暗唱を宿題に出してほしいとお願いしていまして、今回先生が選んでくださったのは『題李凝幽居』です。

この詩は、私はまったくの初対面でした。

レッスンでは「推敲の元になった詩」とは言われず、「ある有名な言葉の」と先生が説明して下さったので、私ときたら途中まで全く気が付かず、先生にしてみればトンチンカンな反応をしていたと思います。

実際、この詩に合うのは「推」なのか「敲」なのか、はたまたほかの動詞がいいのか?と非常に興味深いレッスン内容になりました(記事の中ほどで詳しく書かせていただいております)。

十二分に興味を持った詩ですが、意味が分かることと、暗唱できることは全く別モノです。

前回の宿題『水調歌頭・明月几时有』より短いとはいえ、初めて触れた詩だったので、今回も覚えるのに随分苦労しました。家じゅうに付箋を貼りまくり、詩の情景が頭に浮かぶようにAIで漫画作成はもちろんのこと、今回はリズムを付けてみたり…と、また下手な鉄砲を撃ちまくりました。

みなと
みなと

泣いても笑っても時間は平等。1週間後に先生の前で暗唱です。

「推敲」の語源になった賈島『題李凝幽居』

『題李凝幽居』は、唐代の詩人・賈島が詠んだ五言律詩です。

とくに有名なのが、この二句です。

鸟宿池边树,僧敲月下门。
(池のほとりの木では鳥が眠り、月明かりの下で僧が門を叩く)

この「僧敲月下门」の「敲」を、「推」にするか「敲」にするか。

賈島が一文字をめぐって考え続けた故事から、文章を何度も練り直すことを「推敲」と呼ぶようになったとされています。

4コマ漫画で見る『題李凝幽居』の情景

今回も絶対字だけではイメージが湧きそうになかったので、『題李凝幽居』の情景をAIで4コマ漫画にしてみました。

題李凝幽居
『題李凝幽居』イメージ漫画

賈島はかつて出家したそうなので、自分のことを「僧」と読んでいます。鳥も寝静まっている夜の月明かりの元、門をたたく音が更に夜の静けさを強調する。そんな情景です。

賈島『題李凝幽居』全文・ピンイン・意味

『題李凝幽居』は、一句が五文字で構成された五言律詩。

ここでは、原文・ピンイン・日本語の意味を並べてご紹介します。

みなと
みなと

5文字なので「タンタンタタタン」のリズムで覚えられるかも。とやってみたりしました。『明月几时有』のようにメロディーがあるといいのになぁと思いました。

《题李凝幽居》贾岛

题李凝幽居
Tí Lǐ Níng Yōu Jū

贾岛
Jiǎ Dǎo

闲居少邻并
Xián jū shǎo lín bìng
人里離れた静かな住まいには、
近くに隣家もほとんどありません。

草径入荒园
Cǎo jìng rù huāng yuán
草の生えた細い道が、
ひっそりとした庭へ続いています。

鸟宿池边树
Niǎo sù chí biān shù
池のほとりの木では、鳥たちが眠っています。

僧敲月下门
Sēng qiāo yuè xià mén
月明かりの下、
僧が門をたたきます。

过桥分野色
Guò qiáo fēn yě sè
橋を渡れば野の景色が広がり

移石动云根
Yí shí dòng yún gēn
歩みとともに岩や雲の姿も動いて見えます。

暂去还来此
Zàn qù hái lái cǐ
今はいったん帰りますが、
私はまたここへ来ます。

幽期不负言
Yōu qī bú fù yán
この静かな場所で再び会うという約束を、
決して忘れません

暗唱するのも、意味を味わうのも、この二句が重要!

先生から「ここだけが超有名で超大事、これだけ覚えればグッジョブ」と言われたのが、次の二句です。

鸟宿池边树
Niǎo sù chí biān shù

僧敲月下门
Sēng qiāo yuè xià mén

五文字+五文字で、声に出すと心地よいリズムがあって、「主語+動詞+場所」の並びがとても分かりやすいです。

鸟 + 宿 + 池边树
鳥 + 宿る + 池のほとりの木

僧 + 敲 + 月下门
僧 + たたく + 月下の門

しかも、二句の言葉がきれいに対応しています。

「鸟(鳥)」と「僧」:主語、
「宿(宿る・眠る)」と「敲(たたく)」:動作、
「池・树」と「月・门」が、それぞれの情景をつくっています。

鳥は池のほとりの木で静かに眠り、僧は月明かりの下で門を「コン、コン」とたたく。

で、超有名なのが、静かな「宿」と、音のする「敲」の対比で、鳥が眠るほど静かな夜だからこそ、門をたたく音がいっそう鮮明に聞こえてくる。というのがこの詩の魅力です。

みなと
みなと

「推敲」の元となった詩だと知らずにレッスンを受けていた私。先生から「”敲”を言い換えるとしたらどんな動詞がいい?」と聞かれ「寝ている鳥を起こさないようにそっと”推”か、門の把手を”扭”でしょうか?」と答えました。この答えに先生がウケて(なんで?と思いました笑)「”鳥を起こさない”ことを主眼に置くのは日本文化ならではの奥ゆかしさですね~」と仰いました。なるほどです。

声調も、

鸟宿池边树 3・4・2・1・4声
僧敲月下门 1・1・4・4・2声

と上下し、五文字の中に独特のリズムがあります。

暗唱の際は、4コマ漫画を思い出しながら

鳥 → 宿る → 池辺の木
僧 → 敲く → 月下の門

「鳥が眠る静かな月夜に、僧が門をたたく」場面を頭に浮かべると意味と音が結びついて、暗唱しやすくなります。なるはずです(笑)。

『题李凝幽居』暗唱の行程。

今回も先生の朗読をスマホで録音させていただきました。その録音を聞きつつ、自分の声も録音しながら練習したのですが、今回のは特に発音しづらくて、したがって覚えるのもかなり時間がかかりました。

みなと
みなと

先生も同じように仰っていました。「su」「shu」「ju」等の音によって、歌うように滑らかにいかないから。とのことでした。

前回暗唱した『明月几时有』は、私には流れるように感じられましたが、
今回の『題李凝幽居』は、それとはずいぶん印象が違いました。
▶『明月几时有』の暗唱記事はこちら

今回も途中経過を記録

今回も懲りずに失敗音声を残します。

朗読だともう少し発音がマシな気がするのですが「文字を見て発音に注意する」か「なりふり構わず暗唱に全振り」かのどちらかになってしまいます。もし再生される場合、ゆっくり暗唱してますので、1.5倍速くらいで流してください…。

『題李凝幽居』練習での録音。声調が難しい。

覚えようと頑張っていても、途中で必ず中だるみが訪れます。

打開策を見つけたいと思い、この詩は五言律詩なので、日本の俳句と同じ感覚で「タンタンタタタン」のリズムで覚えればいいのでは?と思い、ものはためしにやってみました。声調・ピンインは度外視しています↓

「タンタンタタタン」のリズムで暗唱してみました。

このリズム暗記をしたからと言って、覚えられたわけではないですが、気分転換にはなりました。中国語の歌とラジオを聴くのが好きな私にとっては、声調は崩れますが、個人的にはどの詩にもメロディーを付けて欲しいなぁと思いました。

そして迎えた次の授業。ひぇ~、先生の前で暗唱です。

いざ、先生の前で暗唱+録音付き

自分を追い込むきまりごととして、先生の前での暗唱もスマホで録音させていただいています。

録音ボタンを押した途端、頭の中、真っ白状態。謎に自分で自分を追い込んでいる私ですが、いつか平気になる日がくると信じています。

途中詰まりながら、なんとか最後まで暗唱したのがこちらの音声です↓

先生の前になると謎に緊張して発音が変になる症候群。

いつになったら、先生の朗読録音のように優雅な発音で暗唱できるようになるのやら…私の発音はやはりかなり平板で、今回も現実をつきつけられる結果になりました。

自己採点は60点です。実際に暗記してみて「僧推」より「僧敲」の方が発音しやすいし、音としても美しいと改めて感じました。新たな発見に感動です。

暗唱して気づいたこと

今回は、先生から個別の音自体の発音矯正はありませんでした(できているという意味ではなく、全体的にできていないのだと思います)。

反対に、私が自分と先生の発音(ネイティブの方の美しい発音)との違いを発見した気がしたので、その点を色々先生に伺いました。

喋った内容を文字であらわすのは非常に難しいのですが、ネイティブの方の発音はその音が入っていない文字でも巻き舌音っぽい音(「chi」「shi」「zhi」の音)を含んでいるような、その音が背後で抜けているような気がして、さらに先生や、中央電視台のアナウンサーさんなどだと、そこにツルンとした滑らかな輝きが加わっているような。気がします。

先生に↑のことを必死に説明しつつ、その音の感じをマネっ子してみたのですが、できていない私の発音なので、うまく再現ができず、ご納得いただけませんでした(笑)。おいおい攻略していきたいと思います。

まとめ

夜、木で眠る鳥たち
夜、木で眠る鳥たち

『題李凝幽居』を暗唱してみて、何気なく使っている「推敲」という言葉が、ぐっと身近になりました。

「推」か「敲」か。

たった一文字ですが、選ぶ言葉によって、見える景色が変わります。

実際に暗唱してみて「僧推」よりも「僧敲」のほうが発音しやすく、音としてもきれいに感じました。

意味を知るだけでなく、自分の声で読んでみると新しい発見があって、今回も、漢詩を中国語で味わう楽しさを感じた宿題でした。

みなと
みなと

鳥住池辺樹、僧敲月下門。はすぐにでも使ってみたいです。

私が通っているTLIについては、実際に受講した体験をこちら↓でまとめています。

▶【TLI体験記】東京校でレッスン開始!中国語歴25年以上の私が初回授業で感じたこと

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