関西人が中国へ行くと、「对不起」を言いすぎてしまうかもしれません。
「すいません。」
日本いいると、このひと言で会話が成り立つことがあります。
お店に入るときの「すいません」
店員さんを呼ぶ「あの、すいません」
そして、本当に謝るときの「すいません」
日本の人、中でも関西人にとって、「すいません」はまさに万能選手です。
私は関西で生まれ育ち、26歳まで関西で暮らした関西弁ネイティブです。
そのため、2000年に北京に住み始めた時も、関西の「すいません」の感覚を、そのまま中国語に置き換えていました。
人に声をかけるときも「对不起」
お店で店員さんを呼ぶときも「对不起」
人の前を横切るときも「对不起」
今思えば、一日に何十回も「对不起」と言っていたような気がします。
ある日、親しくなった中国の方が、こう教えてくれました。
「北京では、めったなことでは『对不起』とは言わないほうがいいですよ」
「えっ? そうなの?」
私はびっくりしました。
日本語の「すいません」のつもりで言っていただけなのに、中国の方には「そんなに謝らなくても……」という印象だったようです。
その出来事をきっかけに、「日本語の『すいません』と、中国語の『对不起』は、少し違うことが分かりました。
そして、さらにその3年後に上海へ引っ越すと、今度はまたまた驚くことが待っていました。
上海では、「对不起」や「不好意思」を北京よりもずっと気軽に使う人が多かったのです。
「同じ中国でも、こんなに違うんだ」
これらの経験から、私がたどり着いた結論があります。
日本語の「すみません」は、中国語では一つの言葉では表せない。
したがって、使う場面によって「对不起」「不好意思」「你好」を使い分けると、ぐっと自然な中国語になります。
この記事では、北京と上海で暮らした私自身の体験を交えながら、「对不起」の本当の意味と、日本人、特に関西人が間違えやすい使い方についてご紹介します。
「对不起」の意味は?本当に謝るときに使う言葉

まず、「对不起(duì bu qǐ/ドゥイブチー)」の基本的な意味を確認しておきましょう。
中国語の「対不起」は、日本語では「ごめんなさい」「申し訳ありません」という意味の謝罪の言葉です。
ちなみに「対不起」の反義語は「对得起(duì de qǐ)」です。对得起の意味は「あなたに対して恥じることはしていない、申し訳ないことはしていない」になります。
| 对不起 | 相手に対して面目が立たない →ごめんなさい |
| 对得起 | 相手に対して恥じることはしてない →申し訳なくない |

同じような肯定否定系では「买得起(mai de qi)」买不起(mai bu qi)があります。お金があって買える。お金がなくて買えないの意味です。
なので、「对不起」は、自分に非があることを認めて謝る言葉です。
日本語の「すみません」は、もちろん謝るときに使いますが、実際にはそれ以外の場面でもよく使いますね。
例えば、
- 店員さんを呼ぶ
- 人に声をかける
- 人の前を通る
- お礼の意味でも
こんなときも、私たちは自然に「すみません」と言いますよね。
特に関西では、「こんにちは」「ありがとう」「失礼します」まで含めて、「すいません」がマルチに活躍してくれます。
私は新卒で大阪勤務だったのですが、同じ部署に大阪配属になった東京生まれ東京育ち、チャキチャキの江戸っ子の同期がいましたが、
彼は、関西の「すいません」を習得するまで、丸2年かかったと言ってました。
特に「すいません」のイントネーションが超絶難しかったとのこと。
中国語の四声にたとえると、一声で一本調子に「すいません」ではなく、三声+二声の抑揚で「すいません」と言わないと、関西人ネイティブの「すいません」にならず、反応してもらえなかったそうです。営業職なので、最初に関西人のすいませんをマスターできたのは大収穫だと思います。
「すいません」ひとつとっても、地域によってこんなに感覚が違うのですから、中国語の「対不起」が日本語の「すみません」とぴったり一致しないのは、自然なことかもしれません。
なのに、北京に降り立った頃の私は、関西弁の「すいません」を、そのまま中国語に置き換えて濫用していました。中国の方から見ると、私ったら謝罪しまくりです。
では、関西弁の「すいません」みたいな用法では、中国の人はどんな言葉を使っているのでしょうか。
次は、覚えておくと便利な「不好意思」と「你好」についてご紹介します。
「对不起」よりもよく使う「不好意思」
北京で「对不起」を言いすぎですよ、と教えてもらってから、私が次に連呼したのが「不好意思(bù hǎo yì si)」でした。
直訳すると「気まずい」「気が引ける」というニュアンスですが、関西人の「すみません」に一番近い感覚で使える言葉です。
例えば、
- 「ちょっと失礼します」
- 「お手数をおかけします」
- 「ちょっとお願いできますか」
こんな場面では、「不好意思」がクッションになって、円滑にコミュニケーションが取れることが多いです。
私も北京で教えてもらってからは、「対不起」を連発することはほとんどなくなり、「不好意思」を使う場面がぐっと増えました。
補足|北京と上海では「对不起」に対する感覚も少し違いました
2000年、北京で「对不起」を言いすぎですよと教えてもらってから、私は「不好意思」を使うことが増えました。
ところが、3年後の2003年4月に上海へ引っ越すと、また新しい発見がありました。
上海では、北京よりも「对不起」を気軽に使う人が多かったのです。
もうなんだか北京の人の感覚になっていた私からすると「えっ、そんなことで謝るの?」と思う場面でも「对不起」と言う人がいましたし、「不好意思」は日常会話の中で本当によく耳にしました。
私には、上海で耳にする「对不起」の感覚は、関西人の「すいません」に似ているように感じられました。
中国はとても広い国ですし、これは2000年から2020年の間に私が北京と上海で暮らした中で受けた印象に過ぎません。
それでも、「同じ中国でも、こんなに言葉の使い方が違うんだ」と驚いたことを、今でもよく覚えています。

そして、もう一つ覚えておくと便利なのが「你好」です。
人を呼ぶときは「你好」が一番自然

「你好(nǐ hǎo)」は、「こんにちは」だと習いましたが、中国では時間帯に関係なく一番よく耳にしたのは、「人を呼ぶ言葉」としての「你好」でした。
例えば、お店で店員さんに声をかけたいとき。
日本なら、
「すみませーん」
ですが、
中国では、
「你好〜」
と声をかけることがよくあります。
「ちょっといいですか」
「お願いします」
そんな気持ちを込めて、「你好!」と呼びかければ、多くの場合はこちらを向いてくれます。
私も今では、中国で人に声をかけるときは、まず「你好」を使います。
一つ、ちょっとしたコツがあります。
恥ずかしそうに小さな声で、
「……你好。」
と言っても、にぎやかなお店では気づいてもらえないことがよくあります。
そんなときは、少し勇気を出して、
「エイ!你好!」
くらいの勢いで声をかけるのがおすすめです。
最初は少し照れますが、中国ではごく自然な呼びかけ方です。
呼び方にも時代の変化を感じます

私が北京で暮らしていた2000年頃は、お店で店員さんを呼ぶとき、
「服务员(フーウーユエン)!」
と呼びかけるのをよく耳にしました。
若い女性なら「小姐(シャオジエ)」、若い男性なら「小伙子(シャオフオズ)」と呼ぶのもごく一般的でした。
ところが、その後、中国でも国際化が進み、呼び方も少しずつ変わってきました。
最近では、「你好」で声をかけるのが、一番無難で自然な印象です。私も迷わず「你好」を使います。

2000年頃の家楽副(カルフール)で、近くにいた白髪の女性に「同志~」と呼ばれたことがあります。高い棚にある商品を取ってと頼まれたのですが、人民服に黒の布靴を履いていらしたおばあちゃま。貴重な思い出です。
よくある質問
- Q「对不起」は日本語の「すみません」と同じ意味ですか?
- A
「对不起(duì bu qǐ)」は、純粋に謝罪の意味を表す言葉です。
日本語の「すみません」のように、人を呼んだり、ちょっとしたお礼の意味で使ったりする言葉とは少し違います。
場面によって「不好意思」や「你好」と使い分けると、より自然な中国語になります。
- Q「对不起」と「不好意思」の違いは何ですか?
- A
「对不起」は、自分に非があるときに「ごめんなさい」「申し訳ありません」と謝る言葉です。
一方、「不好意思」は「すみません」「ちょっと失礼します」「お手数をおかけします」といった、もう少し軽い場面でも使えます。
日本語の「すみません」に近い感覚で使いたいときは、「不好意思」のほうが自然なことも多いです。
- Q「对不起」と言われたら、何と返せばいいですか?
- A
軽い謝罪であれば、「没关系(méi guān xi/大丈夫です・気にしないで)」と返すことができます。
ほかにも「没事(méi shì/大丈夫です)」など、場面によってさまざまな返し方があります。
まずは「对不起」と「没关系」をセットで覚えておくと便利です。
- Q中国で店員さんを呼ぶときは何と言いますか?
- A
店員さんに声をかけるときは、「你好(nǐ hǎo)」が使いやすい表現です。
日本では「すみませーん」と呼ぶところを、中国では「你好!」と声をかけるイメージです。
にぎやかなお店では、少し大きめの声で呼びかけると気づいてもらいやすいです。
- Q「对不起」のピンインと発音は?
- A
「对不起」のピンインは「duì bu qǐ」です。
「对(duì)」は第四声、「不(bu)」は軽声、「起(qǐ)」は第三声で発音します。
カタカナでは「ドゥイブチー」に近く聞こえますが、中国語の発音はカタカナだけでは表しきれません。
まずはピンインと声調を意識して、実際の中国語の音を聞きながら練習するのがおすすめです。
まとめ
中国語の「对不起」は、関西弁の「すみません」よりも、「ごめんなさい」「申し訳ありません」という謝罪の意味が強い言葉です。
ちょっと声をかけたいときは「你好」、軽く「すみません」と伝えたいときは「不好意思」、きちんと謝るときは「对不起」。
関西人の私にとって万能だった日本語の「すいません」も、中国語では万能ではありませんでした。
言葉の意味を一つだけ固定して使うのではなく、その言葉が使われる場面や感覚を知るともっと幅が広がりますね。これぞ、中国語を学ぶ醍醐味ですね。
皆さんも、ぜひ場面によって、使い分けてみてください。
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